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Violets For Your Furs【超訳#2】

“Violets For Your Furs” のストーリー

背景

Tom Adair作詞、Matt Dennis作曲、ニューヨークらしい、とても都会的でお洒落な歌詞と、美しいメロディーが魅力的なロマンティックな曲です。

日本語訳では「コートにスミレを」と紹介されていますが、”Fur”なので毛皮ですね。1940年〜50年代頃は中流階級以上のレディなら、真冬は毛皮の外套(コート)と決まっていた様です。動物愛護団体も当時は今ほど毛皮を問題にしていなかったでしょう。日本では当時も毛皮は高級品ですからコートの方がイメージがしやすく、語呂が良かったのかもしれませんね。

マット・デニスは自らピアノを弾いて歌うシンガーソングライターで、当時はテレビ番組にも出演しています。ヒット曲も多く、”Engel Eyes,” “Everything Happens to Me,” “Will You Still Be Mine”等はジャズシンガーのみならず、多くのジャズミュージシャンに演奏されて続けています。

Leon Russell作詞作曲の”This Masquarede”は”Engel Eyes”のコードチェンジ(コード進行)と同じなんですよ。

YouTubeではマットが自ら、ローズマリー・クルーニーの前でピアノを弾いて歌っているビデオがありました。

多分僕の曲の中で一番Corny(コーニー:あまりにも感傷的で陳腐な)な唄だとは思うんだけどね。雪の降るムーディーなある夜、僕の相棒のトムは当時付き合っていたガールフレンドと丁度仲違いしててね、ニューヨークのクラブでジャズコンボが演奏するブルースを一緒に聞いていたんだ。ふと彼がいいタイトルを思いついてね、僕は直ぐにメロディーを作り始め、彼は歌詞をテーブルクロスに書き始めて、その夜がふける前にできちゃった曲なんだよ。

*having beef with sb/sth: <スラング>(誰か、何か)に不満がある、喧嘩をする

女性が歌っても素敵

小雪が舞い落ちるニューヨークの街を歩く男女のワンシーンを描いた曲です。マット・デニスが弾き語りするので、男性がスミレの花を女性に買ってあげるという設定ですが、女性が歌う場合は以下のように変えましょう。

男性: I bought you violets for your furs(君の毛皮を飾るスミレを買ってあげた

  1. 女性: You bought me violets for my furs(貴方が私の毛皮を飾るスミレを買ってくれた
  2. 女性: You brought me violets for my furs(貴方が私の毛皮を飾るスミレをくれた

①と②は何が違うかと言うと、スミレを買ってくれた事に重きをおくか、スミレを(bring)もたらしてくれたと言うニュアンスの違いです。Billy Holidayは”Lady In Satin”というアルバムの中で”brought me…”と歌っています。

私は買ってもらったと歌うのに抵抗があるので、②で歌っています。これは全く個人の好き好きです。逆に、バラではなくスミレの花を選んで買っている訳ですから、ひょっとしたらお金に余裕のない男性なのかもしれませんけどね。(笑)

私はスミレを買う行為よりも、小さなスミレの花を捧げたいと思う男心に惹かれます。恐らく、ストリートベンダーの花売りがスミレのミニブーケやブートニアを売っていたのでしょう。当時のニューヨークの生活感、季節感があり俳句的に感じられます。

映画のワンシーンの様な情景

この詩は8小節のヴァース(語り)とABA’C形式のコーラスで構成されています。
Aの部分が寒い冬に小さな春の訪れを告げる小さなスミレのブーケを手にしている男女の風景。モノトーンの冬の街が春めいてきます。Bの部分でスミレのブーケに舞い落ちる雪に一気にフォーカスします。A’で今度はこの男女が空を見上げ、そして行き交う人々に目を向けます。Cで二人は見つめ合い、恋に落ちるというストーリーがイメージされます。

Verse:ヴァース

It was winter in Manhattan falling snow flakes filled the air.

The streets were covered with a film of ice.

But a little simple magic that I’d heard about somewhere,

Changed the weather all around, just within a trice:

それは雪が舞い落ちるマンハッタンでのある冬の出来事。
通りは氷の被膜で覆われていた。
でも何処かで聞いたちょっとした魔法が
瞬く間にそこら中の季節を変えてしまったんだ。

Chorus:コーラス

I bought you violets for your furs
and it was Spring for a while, remember?
I bought you violets for your furs,
and there was April in that December.

The snow drifted down on the flowers
and melted where it lay.
The snow looked like dew on a blossoms
as on a Summer day.

I bought you violets for your furs
and there was blue in the winterly sky.
You pined the violets to your furs
and gave a lift to the crowds passing by.

You smiled at me so sweetly,
since then one thought occurs.
That when we fell in love completely.
The day that I bought you violets for your furs.

  • *I→You
  • *bought→brought
  • *you→I
  • *your→me

貴方のコートにスミレの花を
するとたちまち春になった、覚えているかい?
貴方のコートにスミレの花を
12月に4月が訪れた

雪が花のブーケに舞い降りて
そこで溶けた
雪は雫になった一輪の花の上で
夏の日の様に

貴方のコートにスミレの花を
冬空に青空が広がった
貴方がコートにスミレの花を刺して
道行く人々にそれを見せたんだ

貴方が優しく僕に微笑みかけて
その時か何かが弾けたんだ
僕らが完全に恋に落ちた瞬間だった
毛皮のコートを纏った貴方に、僕がスミレの花を買った、あの日

 

ところで作詞をしたトムは喧嘩をしてた彼女と、よりを戻したくてこの詩を書いたのかしら?その後二人はどうなったんでしょうね?