”I Can’t Give You Anything But Love”のストーリー
Dorothy Fields(ドロシー・フィールズ)作詞、Jimmy McHugh(ジミー・マクヒュー)作曲で、1928年にAdelaid Hallというジャズシンガーがニューヨークののクラブ、Les Ambassadeurs Clubで歌ったのが初演です。
全音楽出版社の「スタンダード・ジャズのすべて2」では、日本語で「捧げるは愛のみ」と訳されています。エラ、サラ、サッチモ等、多くのジャズヴォーカリストが歌っている有名な曲の一つです。
この曲は沢田靖司ジャズヴォーカルスクールで生徒達が一番最初に習う曲だったので、私にとっても思い出深い曲です。ジャズヴォーカル初心者は、最初はコーラス部分を4ビートで言葉をスイングさせて軽快に歌う練習をすると良いでしょう。スローバラードでも歌える曲ですよ。その時は是非ヴァースから歌ってくださいね。
Verse:ヴァース
Gee, but it’s tough to be broke, kid.
It’s not a joke, kid, it’s a curse.
My luck is changing, it’s gotten from
simply rotten to something worse
Who knows, some day I will win too.
I’ll begin to reach my prime.
All I can spend is just my time.
ああ、金が無いって辛いよな。
まじ冗談抜きで、もう呪われてるって感じ。
僕の運も尽きてきて、単に腐ってたのがさらに悪くなってきた。
いつか僕にも運が開けるなんて誰も分からない。
自分が人生最高の時に近づきはじめるなんて。
今それでも僕に分かるのは僕らがどうなるか、
自分が使えるのは、自分の時間だけってことだね。
Chorus:コーラス
I can’t give you anything but love, baby.
That’s the only thing I’ve plenty of, baby.
Dream a while, scheme a while.
We’re sure to find happiness, and I guess,
all those things you’ve always pined for.
Gee, I’d like to see you looking swell, baby.
Diamond bracelets Woolworth doesn’t sell, baby.
Till that lucky day, you know darned well, baby.
I can’t give you anything but love.
僕には愛情しかあげるものが無いよ、君。
僕が沢山持ってるのはそれだけだからね。
しばらくの間は夢見たり、思い描いていてよ。
幸せとか、多分君がいつも願っていてる全ての事を、僕らはきっと見つけられるよ。
ああ、そりゃ僕だって君の素敵な姿を見たいよ。
でもダイアモンドのブレスレットは僕が行くような店には売ってないんだよ。
そんな幸運な日が来るまで、待っててよ、君。
何も無いけど、愛情だけなら沢山あげられるから。
ポイント解説
ヴァースの中の”Kid”とコーラスの中の”Baby”がこの歌に独特のリズムを与えていますね。この歌詞はワーキングクラスの人々の日常の話し言葉を、そのまま詩にしたという感じがします。
“Kid”
ここでは誰かに呼びかける効果を出したり、話し言葉のリズムとして使われているのですが、私は自分自身に語りかけている効果を出していると思います。”Kid”は今のニュアンスの日本語には訳しづらいのですが、ちょっと時代を遡ると日本でも「そこの若いの」とか「おい少年」「そこのガキ」などと呼びかけていましたよね。
ヴァース:語りの部分
ヴァースはコーラスを歌う前の導入部の語りになるので、上手に語りながら歌えるようになるには時間がかかります。スイングで歌う時は省略しても構いませんが、ヴァースのある曲はなるべく覚える様にすると、自分の楽曲に対する理解が深まると共に、ステージでも幅のあるパフォーマンスが出来るようになるのでお勧めします。
“Baby”
これは本当に日本語に置き換えるにはニュアンスが難しいですね。これは、目の前にいる人に呼びかける時に使うのですが、女性も男性も異性に対して使いますし、親が子供にも使います。「かわい子ちゃん」だと女の子にしか使えないし、言い方次第で「君」「あなた」「あんた」「愛しい人」「私のいい人」と幅が出ます。「ベイビー」は日本語には置き換えないほうがいいかもしれませんね。”Baby”の他に”Sweetie”や”Honey”等もよく使われます。この曲中に何度も出てくる”Baby”を発音するときに、リズムに乗せて変化をつけると歌に広がりが出ます。
“Woolworth”
1912年から5セントや10セントショップの安売りのお店として誕生し、90年代まではNYにもあったそうです。日本にも100円ショップがありますが、アメリカ人にしてみれば、”Woolworth(ウールワース)”=安売りの店なんですね。今でもこのお店の事を覚えている人が沢山いて、今のKmartみたい家庭用品がなんでもあった雰囲気だったけど、洋服は売ってなかったそうですよ。”Woolworth”は発音が難しいですが、ちょうどブリッジ(サビ)の部分の盛り上がる所にある言葉なので、正確な発音がとても大事ですね。